指導員のご紹介
「積み重ねれば、花は咲く」
ということを
子供たちに経験させてあげたい
世田谷学園 陸上部 金廣 峻介さん
プロフィール
高校生の部活動から陸上競技を始められ、今も現役の陸上プレイヤーとして活躍。身体も心も大きく成長する中学生・高校生の時期をサポートしたいという想いから、部活動指導員として活動されています。本業はトレーナーをされており、フィットネスクラブやスポーツチームなど幅広い拠点で運動指導されている傍ら、陸上系のYoutubeチャンネルなどでも活躍中です。
1. 人間的にも大きく成長する時期のサポートをしたい
陸上競技との出会いや、現在の関わり方について教えてください。
陸上競技を始めたのは高校の部活動からです。陸上を始める前までは、運動をしておらず吹奏楽部だったんですよ。ただ、高校から運動部で活躍するとなると、サッカー部や野球部だと難しいと感じて、陸上なら「走るだけ」なのでなんとかなりそうだなと、安易な考えで始めて今に至るんですが。 それ以降、大学・社会人と続け、今はトレーナーの仕事をしていますが、プレイヤーとしても今でも陸上競技を継続しています。種目は100m・200mの短距離走をメインにやっています。
部活動指導員になろうとしたきっかけはなんですか?
中学生・高校生の時期は、競技パフォーマンスに限らず、人間的な部分も大きく成長する時期だと思っているんです。そんな時期の子供たちを「競技だけでなく身体と心の成長をサポートしたい」と思っていたんです。もともと陸上をやっていましたし、コロナ以前にも別で陸上の指導をしていたので、どこかで陸上部を教えられたらと思って探していたら、サクシードさんを見つけたので応募してみました。その後、世田谷学園さんをご紹介いただきまして、見学や面接を経てすごく雰囲気が良かったので、「お力になれれば」と部活動指導員をやらせていただくことになりました。
中学生・高校生の時期にご自身が成長されるような経験があったのでしょうか?
そうですね。高校生のときに所属していた陸上部は部員も少なく、いわゆる「弱小陸上部」でしたし、私自身、脚は早いタイプではなく、成績も地区予選止まりだったんですよ。ですが、顧問の先生が比較的指導に熱心なタイプだったので、しっかりと指導してもらうことでどんどん記録が伸びるようになったんです。
業界的に、“男性は100mを10秒台で走る”というひとつの目標点があり、高校生の時にその記録を目指していました。残念ながら、高校生の間にその記録には届かなかったのですが、最終的には大学4年生の時に10秒台を出すことができました。そういった自身の経験から「積み重ねれば、花は咲くんだよ」ということを子供たちに経験させてあげたいという気持ちがありますね。
2. 伝統を汲みながら、話を聞いてもらうための関係性づくり
部活動指導員として指導はどのようにされていますか?
今では早く走るための知識や理論なども教えていますが、世田谷学園さんで指導を始めた当初は、もともとその学校で受け継がれている「伝統」や「部活動に対する生徒の取り組み方や雰囲気を知る」ところから始めました。あくまで生徒が主体となっている雰囲気を知る必要があるなと思ったので。3年生が引退して新体制になるタイミングで、学校の伝統や部活動の流れを汲みながらも「こういう工夫をしたら、より円滑な部活動ができるのではないか」などを提案していましたね。
学校側から伝統を重んじてほしいという要望があったのですか?
いいえ、特にありませんでした。学校からは「部活動の雰囲気を見て、あとは自由にやってください」とのことでした。ですが、時期的にコロナによってなかなか部活動ができていなかったようで、生徒たちも伝統を思い出しながら活動していたんです。なので、その中で部活動指導員としてどうサポートしていくかを考える形でしたから、タイミングとしては良かったかもしれませんね。
また、いきなり部活動指導員として現れて、偉そうに指導したら反感を浴びるだろうとも思いましたし、生徒も部活動に熱心な子や、友達となんとなく部活動をやっている子など、部活動に対する取り組み方や目的は生徒によって様々だと思うんです。私自身、中学生の頃「何も考えず、暇だから部活動をやる」と思っていたタイプだったので、過去の自分を振り返ってどのように生徒と接すれば良いのかを考えています。
決して「偉そうにしないこと」や「目線を生徒たちに合わせて接すること」を心がけながら、「テスト頑張ったか~?」など他愛のない話で生徒たちとコミュニケーションを取りながら、指導に必要な「フィジカルな話を聞いてもらうための関係性づくり」も大切にしています。
そのほかに、生徒さんや保護者さんとの関係づくりにおいて大切にしていることはありますか?
いつも意識していることなんですけど、まずは「挨拶をちゃんとすること」ですね。子供たちからすると、大人に挨拶すること自体が緊張してしまうことかもしれませんし、子供たちって意外と大人の顔色を伺っているので。それなら自分から挨拶をして距離を近づけるほうが早いなと思っています。
あとは、全体への声掛けはもちろんですが、生徒一人ひとりへとのつながりも大切しているので「個々への声掛け」もとても意識しています。加えて、とにかく「褒めること」と「ネガティブなことは絶対に言わないこと」ですね。
なんとなく、金廣さんは生徒さんから気に入られるキャラクターなんだと思います。生徒さんを大切にしているという気持ちが伝わってきます。
そう…なんですかね?ですが「気に入られたい気に入られたい!」っていう欲求は強すぎると良くないとは思いますが、気に入られない限りは話を聞いてもらえないですし。下手(したて)に出ることはなく「フラット」に「子供扱いはしない」という感じですね。あくまでコーチと生徒というスタンスを取っていますが、「良い感じのにいちゃん」くらいのイメージで生徒と接した方がいいのかなと。
3. シンプルに自分がされたら嫌なことはやらない
最近、学校側が特に気にされているのが「パワハラ」や「セクハラ」などの問題ですが、そういった部分で何か気を付けていらっしゃることはありますか?
時によっては、フォーム指導のためにボディータッチを行うこともありますが、男子校ということもあって、基本的には過敏になりすぎなくても問題ないのかなと感じています。あとは、生徒の練習があまりうまくできなかったとしても決して責めることはありませんし、「だからダメなんだよ」などの決して屈服させるようなことは言葉も使いません。頭ごなしな言い方や雰囲気はよくないですし、「惜しかったな~!でもこうすればいいんだよ」とか「もうちょっとこうしたら変わるよ」と、私自身も悔しがっているようなニュアンスで、「生徒を期待している気持ち」が伝われば良いかなと思っています。あとは、言葉はポジティブでも表情がネガティブなど、ネガティブに引っ張られるので、「表情などのノンバーバルな部分」も気をつけるようにしています。
マネジメント職やマネジメントをする管理職に必要な資質に通ずる部分を感じます。
特別なことはしていませんし、割と当たり前ですけど、シンプルに「自分がされたら嫌なことはやらない、これを言われたら嬉しいなっていうことを言う」、それが一番いいのかなって思っています。あとは、結果だけを見るということは絶対しないようにしていて、結果が出ても出なくても「褒める」ことですね。結果がどうであれ、生徒が少しでも何かに向かって頑張った・挑戦したことが「生徒たちの心の成長につながる」部分だと考えています。やはりプロセスが大切だと思いますし、そのプロセスを見てくれている人は絶対いるとも思っています。
もちろん結果も大切ですが、世田谷学園さんの陸上部はこれから成長していく環境だと思うので、たとえ結果にフォーカスする段階でも、指導の方法は変わらず、「褒めて伸ばす」というか「頑張っているプロセスをちゃんと褒めること」は意識しています。実際、そういった指導が今の世田谷学園さんにもあっているのかなと感じています。
4. どこを目指し、どのように頑張るかは生徒自身が決め、
それをサポートする環境作りを
今後や未来をイメージされながら指導をされているというのが伝わってきました。
特に世田谷学園さんは学校歴代の記録があって、それを目標に頑張っている子が多いので、今はそこで頑張ろうと思っています。外に向いた生徒ばかりではなく、緊張しやすい子もいますし、生徒同士の切磋琢磨も大切だと思うので。そこで経験を踏んだ後に、外の世界も見えてくると思うので、その段階で少し外の世界を教えてあげようかなと思っています。最近は、都大会に出場したりし始めたので、自然と外の世界を見れているのかなと思いますし、上には上があるということも知ることができたのではないかと思います。
学校内の歴代の記録を目標にすることにもフォーカスして欲しいですし、勝負するのは外の世界なので、外での実績にもフォーカスして欲しいと思っています。まだ部活動指導員を3ヶ月程度ですが、少し指導をしたら伸びた子がいっぱいいたので、陸上の楽しさが少しわかってきたのかなと思っています。どこを目指すか、どのように頑張るかは「生徒自身で決めて欲しい」と思っていますし、それをサポートする環境を作りたいと思っています。
5. 先生方の仕事が円滑に行われるよう、
うまく循環していく環境づくりができれば
部活動指導員を活用することについて、まだまだ抵抗のある学校も多いようなのですが、そういった学校に向けてメッセージをいただけませんか?
もちろん、部活動指導員を活用するメリットとして、専門的なプロに教わる方が効果も出やすいという側面も大きいと思いますが、やはり、先生方も「身体が資本」だと思うんです。もちろん私自身もそうですが、「元気じゃないと子供たちを教えられない」ですし、指導もできないと思うんですよ。先生方の仕事って大変ですよね。ただでさえ、普段の学校生活とか授業でたくさん生徒を見ていますし、その上で更に部活動顧問をするというのは結構しんどい方が多いんじゃないかなと。なので、身を削ってまで部活動指導をする必要はないんじゃないかと思います。
そういった部分で、部活動をちゃんと見れる指導員に協力してもらった方が、先生の仕事も円滑に行なわれるのかなと思いますね。私たち部活動指導員は、先生方に部活動指導をされたくないというわけでもないですし、先生方と部活動指導員が「コミュニケーションをとりながら、うまく循環していく環境づくり」ができれば、良い方向に進んでいくと思います。
以上、金廣さんのインタビューでした。生徒さんたちがいる環境や学校の流れを汲み取りながらも、決して結果や成績だけをみず、そのプロセスにもしっかりフォーカスして、長期的な目で子供たちの成長を考えられているのがとても印象的でした!また、生徒さん自身がどうしたいか選択できる環境を作りたいという「生徒さんの立場に立って」考える、生徒さん思いであたたかな考え方も金廣さんの大きな魅力でしょう!!