指導員のご紹介
常に生徒の目線で考え、つらい思いをさせたくない。
橘学苑 チアリーディング 部 丹下 碧さん
プロフィール
高校生の時にチアリーディングに出会い、高校3年間選手として活動されていました。
選手時代に環境に恵まれず悔しい経験をしており、その経験から「こうだったら、私はもっと伸びたのではないか?」「今の子たちにつらい思いをしてほしくない」という思いから、部活動指導員として活動されています。現在結婚もされており、本業としてIT会社に勤めながら、部活動指導員として日々指導に勤しんでいらっしゃいます。
1. 現役時代の悔しさを、今の生徒たちに経験してほしくない
チアリーディングの経歴を教えて下さい。
チアリーディングに出会ったのは高校生で、高校3年間選手としてやっていました。
ですが、そこまで強いチームに所属していたわけではなく、優勝だったり、大きな大会に出場したりはありましたが、結果という結果は残せていないんですよ。正直な話をすると、華々しい経歴はないですし、高校卒業後、一旦チアリーディングから離れているんです。
チアリーディングから一度離れているんですね。
チアリーディングは身体的なリスクも大きい競技ですし、私はチアリーディングを片手間で活動していいスポーツではないと思っているんです。私の性格上、やるならトップを獲りたい!と思ってしまうので、チアリーディングをするなら「仕事を片手間に、チアリーディングのための生活」をしないとできないと思ったんです。なので、仕事に重きを置き、チアリーディングを離れるという選択をしました。
なぜ部活動指導員をやろうと思ったんですか?
単純にチアリーディングが好きなんですが、現役時代に結果を残していないというところに「悔いが残っている」というのもあります。現役時代はいい経験ばかりではなく、先生やコーチとの相性だったり、環境へ少し不満があったりしたんです。「こうだったら、私はもっと伸びたのではないか?」「もっとチームとして強くなれたのではないか?」という悔いが大きくて、当時の思いを打破したいなという思いもあるんです。
選手時代はどんな経験をしてきたのでしょうか。
私は結果を出したくて、バック転がしたいなど「こういうことがしたい」という明確な思いがあったんです。
ですが、在籍していたチームでは個人技量よりも、チームとしての平均値を特に求められていて「突出してはいけない」という暗黙のルールがありました。やれば出来るのにやらせてもらえなかったり、実力で評価してもらえなかったりという…当時は、その環境と自分の気持ちの折り合いで、ものすごく心が折れましたね。しかも、学生って自分の意のままに環境を変えられないじゃないですか。簡単に転校なんてできませんし。
過去の経験が、部活動指導員になろうと思った動機の一つなんですね。
社会人になるにつれて「自分が指導者になれれば、もっと環境を変えることができる立場になるんじゃないか?」「今の子を、あんな風にさせたくない、伸ばせるところは伸ばしきってあげたい」と思うようになっていって、ネットで検索してサクシードのページを見つけました。悔しい思いを打破するチャンスがあるのなら、チャンスを掴もう!と思って部活動指導員に登録しましたね。
2. 「生徒目線」を大切に。チアリーディングを通して人生が豊かにしてあげたい。
生徒を指導する上で大切にしている上で大切にしていることは何でしょうか?
「生徒たちの目線を忘れないこと」ですね。生徒たちとは月1回に1対1の対話をやっていて、「最近どう?」とか「なんでチアリーディング部に入ろうと思ったの?」とかを聞きます。もしかしたら、優勝などの結果ではなく、部活の楽しさを求めている子もいると思うので、一人ひとりのパーソナル分析をしています。もちろんチーム競技なので折れてもらわなきゃいけない場面もあるとは思うんですが、チアリーディングを嫌いになっちゃったら元も子もないじゃないですか。だからこそ、「一人ひとりに寄り添うこと・パーソナルを大事にすること」を大切にしています。
丹下さんが指導している学校に連絡した時、学校側からお褒めの言葉を頂いたんです。丹下さんご自身も、積極的に生徒と一緒になって身体を動かしているというお話を伺いました。
そうですね。『実演して示す』これは私が現役の時に先生やコーチにやってほしかったことなんです。現役の時に、口頭で「こうしなさい」「ああしなさい」と指導を受けていたのですが、言われた通りにやってもできないことも多くて、だから当時は「先生、やったことあるの?」とか「指導が間違ってるんじゃないの?」とか先生に不信感を抱いてしまうことがありました。今考えると、自分の実力不足だとは思うんですけどね。こういう経験もあり、実演して示すようにしています。
また、チアリーディングは『表現の競技』なんです。目の力、姿勢、骨1本の動かし方で空気が変わるので、表現が変わります。表現って言語化するのが難しくて、だからこそ実演してあげる必要があるし、だからこそ生徒たちに習得してもらうためには、一緒になってやるしかないと思っています。
指導も生徒たちと同じ目線なんですね。子どもたちにとって、それはとても嬉しいことだと思います。
最終的にチアリーディング部を通して、生徒たちが「この経験をしてよかった」という気持ちになってもらい、この先の人生が豊かになれば、それだけで良いと思っています。指導者としては、生徒たちたちの頑張りを一番見ているからこそ、結果を出してほしいって思っちゃうんですが、辛い経験よりは楽しい経験のほうがいいですよね。
3. 同性ならではの気遣い、そしてロジカルに説明をすること
昨今、学校側が特に気にしているのが「パワハラ」「セクハラ」などの問題です。同性でも関係なく「セクハラ」などが取り沙汰されやすい世の中ですが、そういった部分でなにか気をつけていることはありますか?
先ほどお話したとおり、チアリーディングは”表現の競技”なので「身体のフォームチェック」をすることが多いんですよ。でも、実演して見せても真似できない子もいるので、その時は腕や肩を触ってフォームを作ってあげないといけない時もあります。同性だから感じる「嫌な触り方はしない」というのはもちろんですが、フォームチェック時は、競技用の手袋は装着して素手で直接触ることは避けていますね。素手で触らないといけない時は、あまり手の平は使わず、ほんの少しだけ触れるくらいにしています。生徒たちも多感な時期なので、なにをどのように受け取るかわかりません。できるだけ誤解が発生しないように色々気をつけています。
パワハラについては、指導する際は「緩急をつける」ことは気をつけていますね。少し厳しい指導したら、生徒の表情を見て、すぐパッ優しくするなど緩急をつけるようにしています。あとは「ロジカルに説明する」こと。指導する際に、ただ怒鳴りつけるというのは違うと思うんです。「なぜ私は今厳しく言っているのか」「なぜこれをやるのか」など、状況と理由、背景を説明した上で「納得感のある叱り」をするようにしていますね。
今の子は、幼い頃からネットに触れていて身近に情報が多いせいか、納得しないと前向きに進めない子が多いように感じます。
そうですね。特に女の子は複雑なので、厳しくするという時は前もって予告しておきます(笑)「来週から厳しくなるよ。なぜなら、大会が近いから」「分かった?覚悟はできてる?」って。そして翌週はちゃんと厳しくします。これは、信頼関係の上で成り立っているものなので、コミュニケーションはこれからも一番大事にしていきたいですね。
ご自身の経験が指導にも活かされてるんですね
私自身、プレイヤーとしても、指導者としても本当に周りに恵まれているんです。だからこそ、周りに恵まれた自分がやってきたこと・経験を後世に伝えたい。そして、自分が教えてきた子たちの中から「私も指導者になりたい」と思ってくれる子が出てきてくれると嬉しいなと思います。
4. 生徒たちの精神や経験を豊かにしてあげること
部活動指導に対して学校側から求められていることはどんなことだと感じますか?
今のところ学校側からは「生徒たちが求めるチアリーディング」を、伸び伸びとやらせてあげることを求められていると感じています。私自身も結果はその先にいずれついてくると考えているので、生徒たちの精神や経験を豊かにするということを重視し、指導をしています。
生徒たちとの関係性と同じくらい、学校側との関係性も大切だと思うのですが学校側とのやり取り・関係性はいかがですか?
ビジネスライクにやり取りができていて、スムーズでとてもやりやすいです。学校側も私の本業のことを理解してくれているので、柔軟にスケジュールを設定してくださいますし、逆に土曜日などは私が学校側にあわせるように心がけていますね。お互いにやれるところは話し合いながら、信頼関係を築けているので、今はやりやすいです。
本業のお話が出ましたが、普段はどんなお仕事をされているんですか?
ざっというと、IT系のベンチャー企業で働いています。仕事の両立については、これは完全に本業の理解があるからですね。他の会社もそうだと思うのですが、うちの会社も副業に対して柔軟な検討をしてくれていますし、加えて、今はコロナの影響でリモートワークが普及、かつ時間にも柔軟性が出てきました。「どこに居ても結果さえ出せば良い」という評価になってきているので、やりやすいですね。
5. 生徒のため、そして先生のための部活動指導員
最後に部活動指導員導入を悩まれている学校が沢山あるのですが、そういった学校の背中を押してあげられるメッセージを頂けますか?
私たち部活動指導員は、学校にお金を出して雇って頂いているので、部活動指導員の立場としては、学校・先生に対して費用対効果を出さなければならないと思っています。先生が部活を教えることが負担になって、学校の業務を何かこぼしてしまうのであれば、部活動指導員が部活の部分を請け負うことで、先生の業務を軽くすることができますし、その空いた時間を思う存分先生という職業にあてていただきたいと思います。
学校は先生に対して、先生という職業を存分にやってもらうことの対価を払っていると思うので、部活動指導員はそのサポート、いわば、「先生の価値を最大化すること」だと思っています。加えて先生方の中に、すべてのスポーツをやったことある先生は少ないと思うんです。なので、そのスポーツのプレイヤー経験がある指導員を迎え入れたほうが、現在プレイヤーである生徒たちの気持ちが十二分に理解してあげれらますし、なにより怪我のリスクも減ると思います。プレイヤー経験がある人は、見ていて「あ、怪我する」っていうポイントがやる前から分かるので、生徒たちの怪我のリスク、安全面が保たれると思っています。生徒のため、そして先生のためにも、経験のある部活動指導員を雇うことは有益だと思います。
以上、丹下 碧さんのインタビューでした。部活動指導員という立場も客観的に捉えており、学校にとっても生徒にとっても有益な存在でなければならないという強い使命感を感じました。また、辛い経験を、今の世代の子達に経験させたくない。伸ばせるところはどんどん伸ばしたい、と常に生徒の目線で考えることも丹下さんの大きい魅力だといえるでしょう!